
コア業務へのリソース集中やコスト削減、業務効率化を実現する経営戦略として、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)への関心が高まっています。しかし、「どこまでの業務を委託できるのか?」「どのようなメリットやリスクがあるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「購買BPO」とは何か、その基本的な概念から対象となる業務範囲、導入によって得られるメリット、そして見落としてはならない注意点までを詳しく解説します。
BPOとは
BPOとは、「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取った言葉です。自社で行っている特定の業務プロセス全体を、企画・設計から実際の運用まで含めて、専門的なノウハウを持つ企業に委託する経営戦略を指します。人手が必要な作業の一部を外部に任せるアウトソーシングとは異なり、BPOでは業務プロセスそのものを外部に委託する点が特徴的です。
BPOの対象となりやすい業務には、いくつかの特徴があります。例えば、経理の入力業務や給与計算、コールセンターのように一定の業務量があり、高度な専門性よりも定型的な作業の量や煩雑さが大きい業務が挙げられます。また、物理的に離れた場所でも管理が可能で、人手不足や人件費の高さが課題となっている業務も適しています。さらに、法的な規制や物理的な制約が少ない業務も、BPOを導入しやすい傾向にあります。
購買におけるBPOとは
企業の様々な業務で活用が進むBPOですが、購買・調達の領域においてはどのような形で適用されるのでしょうか。
ここでは、購買業務におけるBPOの対象や導入状況について解説します。
購買BPOの対象
購買業務は、大きく「ソーシング」と「パーチェシング」に分けられます。ソーシングは、コスト削減に取り組むべき品目を選定し、達成可能なコスト削減目標の策定、取組品目の仕様や取引条件を明確にし、最も適切な条件を得るためにサプライヤの選定や交渉を行うことです。購買に関わる部門にとっては極めて重要な業務と言えます。ソーシングには取組品目ごとに”最適な発注要件を定め”、”発注要件を満たしたうえで適正価格を提示するサプライヤを選定”するという2つの重要な要素が求められます。企業の競争力に直結するコア業務とみなされることが多く、BPOには馴染みにくい領域です。
対して「パーチェシング」とはサプライヤ選定後の契約締結・発注から支払いまでのプロセスを指し、発注、納品、検収、支払いなど、実務的な購買活動です。BPOが対象とするのは、主に「パーチェシング」と呼ばれる業務領域です。具体的には、以下のような業務が挙げられます。
- 契約内容の管理、契約更新のアラート
- 購買システムのマスタデータ管理(住所マスタ、人事マスタ等)
- 電子カタログのメンテナンス
- 発注後の納品確認や検収処理の督促
- 社内外からの問い合わせ対応
- 購買実績のレポーティングなど
このように多岐にわたる業務を効率よく運用する一つの手段として、BPOを活用している企業が年々増加しております。
購買におけるBPOの現状
様々な業務領域でBPOの導入が進む一方で、購買・調達の分野では活用があまり進んでいないのが現状です。その背景には会社全体の購買状況、特に“間接費”に該当する品目の、支出状況や購買業務プロセスが不透明であることが課題として挙げられます。
まず、会社全体の支出状況について見てみましょう。“直接費”のうち製品の主原料にあたる「直接材(直接材料費)」の調達は、企業の競争優位性に直結するコア業務であり、戦略的な判断が多く求められます。そのため、基本的にBPOの対象とはなりにくいと考えられています。
一方で“間接費”のうち、事務用品の購入など企業の事業運営において発生する間接的な経費にあたる「間接材(間接材料費や間接経費)」は定型的な業務も多くBPOを検討すべき領域ですが、実際は「属人化」と「不可視化」がBPOを導入する障壁となっています。間接材購買のプロセスが体系化されておらず、業務の標準化や可視化が進んでいないため、外部に委託するというBPOの形式を取りにくいことが原因です。
購買業務における課題について
企業活動に不可欠な購買業務ですが、多くの企業が様々な課題を抱えています。特に、従来のやり方が見直されないまま放置されている場合、以下のような問題が発生しやすくなります。
業務煩雑化のため人手が不足している
購買部門は多種多様な物品やサービスを、数多くのサプライヤから調達する必要があります。しかし、サプライヤごとに発注方法や注文書のフォーマットが異なることや、請求処理や支払いなどで複雑な手順を要したりすることで、特定の購買担当者しか業務内容や進め方を理解していない状況に陥り、業務の「属人化」「不可視化」が生じます。そのため、サプライヤの数が増えれば増えるほど管理が大変になり、購買担当者の負担も増大します。
常に多忙な状態が続くと、発注ミスや確認漏れといったヒューマンエラーも発生しやすくなり、さらに時間を取られるという悪循環に陥りがちです。結果として、限られた人員で業務を回すことが困難になり、人手不足が深刻化します。
業務効率化やデジタル化に対応できていない
多くの企業において、依然として電話やFAX、メールでの注文や、Excelでのデータ管理が主流となっているケースが多く見られます。手作業中心のプロセスは、時間と手間がかかるだけでなく、入力ミスや転記ミスが発生しやすいという問題も抱えています。
さらに、必要な情報を探し出すのに時間がかかったり、担当者不在時に業務が滞ったりすることも少なくありません。企業全体のIT化への意識や投資が十分でない場合、こうした非効率な業務が改善されないまま固定化してしまう傾向にあります。
購買情報の管理ができていない
「どのサプライヤから」「何を」「いつ」「いくらで」購入したかといった基本的な購買実績データや契約条件などが、部門ごとに分散・管理されているケースは珍しくありません。情報が一元管理されていないと、適正な価格か判断したり、交渉を行ったりすることが難しくなります。
また、会社全体として購買活動の全体像を把握することも困難です。全社的な支出状況が見えなければ、無駄なコストの発見やサプライヤの集約といった、戦略的な取り組みを進めることもできません。
購買におけるBPOのメリット
購買業務にBPOを導入することは、企業にとって多くの戦略的なメリットをもたらします。具体的には、以下のような効果が期待できます。
業務の効率が上がる
BPOを導入することで、自社で行うよりもスムーズで迅速な業務処理が期待できます。BPOサービスを提供する企業は、様々な購買業務を手掛ける中で培った、効率的な業務遂行のノウハウや体制を持っているためです。
加えて、BPO導入の過程では既存の業務フローを洗い出し、課題を特定したうえで、標準化されたプロセスへ再構築します。いわゆる「ブラックボックス化」していた業務が可視化され、非効率な手順やボトルネックが解消されるため、業務全体の効率が大きく向上します。
業務工数の削減に繋がる
業務効率の向上は、購買業務にかかる総工数の削減にもつながります。BPO事業者には、多数のサプライヤとのやり取りや大量のデータ処理を効率的に行うための仕組みがあるため、見積もり取得から支払い処理までの業務時間を短縮できます。サプライヤの集約や購買プロセスの標準化を進めることで、無駄な作業自体の削減も可能です。
さらに、業務を外部に委託することで、自社で人員を確保する必要がなくなります。日々発生する定型的なオペレーション業務やマスタの更新・メンテナンスといった管理業務から、担当者が解放されるようになります。
コア業務に集中できる
ノンコアな業務をBPOによって外部委託すれば、自社の貴重な人材をより付加価値の高いコア業務に集中させることが可能になります。
購買担当者は日々の発注処理や納期確認、請求書処理といった業務から解放され、企業の収益性や競争力に直接貢献する業務に時間を割くことができます。
外部事業者のベストプラクティスを活用できる
BPO事業者は、コスト削減を達成するためのアプローチやリスクを減らす管理手法、業務効率化のプロセス設計など、幅広い領域で専門知識とノウハウを蓄積しています。そのため、BPOの活用は外部の専門企業が持つ「ベストプラクティス」を自社に取り込む絶好の機会です。
自社だけで知見を得るには、時間もコストもかかります。BPOを導入すればベストプラクティスを迅速かつ効率的に導入でき、自社の購買業務レベルを向上させることが可能です。
新しいテクノロジーや最新手法を導入できる
BPOサービスを利用することで、購買業務に関連する最新のテクノロジーや手法を導入しやすくなるというメリットもあります。BPO事業者は、サービスの付加価値を高めるために、最新のシステムや技術などに投資を積極的に行っていることが一般的です。
自社で最新のテクノロジーや手法を導入するには、高額な初期投資や専門人材の確保が必要になります。BPOを導入すれば、最新の技術基盤を利用したサービスを受けられるでしょう。
購買におけるBPO導入の注意点
購買業務におけるBPOの導入は、効率化やコスト削減など多くのメリットをもたらしますが、その一方で注意点も存在します。
導入を成功させるためには、以下のようなリスクについて事前に十分検討し、対策を講じることが重要です。
ノウハウの蓄積や内製化が難しくなる
業務プロセス全体を外部業者に任せてしまうと、知識や経験、改善策などが、自社に蓄積されにくくなります。BPOサービスへの依存が高まり、契約期間の終了後や内製化したいと考えた際に、スムーズな移行が困難になる可能性があるでしょう。
最悪の場合、委託先がいなければ業務が回らなくなってしまうリスクも考えられます。そのため、BPOを導入する際には「どの業務範囲を委託するのか」「自社内にも一定の知見を残していくのか」といった点を考慮する必要があります。
初期費用やランニングコストがかかる
人件費などの社内コストが削減できる一方で、BPOに支払うコストが必要になる点に注意が必要です。具体的には、初期費用や月額または年額のサービス利用料といったランニングコストが継続的に発生します。
期待される人件費の削減効果や業務効率化による間接的なコストメリットと、BPO関連費用を比較し「本当に費用対効果が見合うのか」を慎重に評価することが重要です。契約範囲外の業務を依頼した場合に追加費用が発生することもあるため、契約内容は十分に確認しましょう。
情報漏洩のリスクがある
購買部門では、購入価格や製品のコスト情報、サプライヤの連絡先、担当者情報、契約内容の詳細など、機密情報を日常的に取り扱います。機密情報を含む業務を外部業者に委託するのは、情報漏洩のリスクも外部に委ねることになります。
したがって、BPOの委託先を選定する際には情報セキュリティ対策が十分であるかを厳格に評価することが不可欠です。また、秘密保持契約(NDA)を締結し、情報の取り扱い範囲や責任の所在を明確にしておく必要もあります。
BPO導入以外にも検討すべき方法
すべての企業にとってBPOが最適な解決策とは限りません。自社の経営戦略や業務の実態、抱えている課題の性質などを踏まえ、BPO以外の方法も含めて、最適なアプローチを検討することが大切です。
ここでは、購買業務の改善策としてBPO以外に考えられる主な方法を2つ紹介します。
購買業務のアウトソーシングを利用する
「購買業務のアウトソーシング」は、購買プロセスにおける特定の業務を切り出して外部に委託するサービスです。例えば「相見積もりの取得作業だけ」「特定品目の発注入力作業だけ」を依頼するといった形です。
メリットとしては、人手が足りていない、あるいは煩雑で時間のかかる特定の業務から担当者の負担を軽減できる点が挙げられます。また、BPOに比べて導入のハードルが低く、コストを抑えやすいことも利点の1つです。
一方、デメリットとしては、委託範囲が限定的なため、購買全体の抜本的な業務効率化やコスト削減には繋がりにくい可能性があります。さらに、委託先との連携や情報共有が不十分である場合は、かえって業務工数が増えるリスクも発生し得ます。
購買管理システムを導入する
購買管理システムは、見積もり依頼から承認、発注、検収、支払いデータ作成までの購買プロセスを電子化し、関連する情報を一元管理するためのITツールです。
最大のメリットは、業務の効率化と可視化です。ペーパーレス化や承認フローの電子化により、業務スピードが向上し、担当者の作業負荷が軽減されます。また、購買データが一元的に蓄積・管理されるため、支出状況の分析やコスト削減策の検討、内部統制の強化が容易になります。
デメリットとしては、初期費用や月額費用などのコストがかかること、システム選定や導入、社内への定着には相応の時間が必要となることが挙げられます。自社で主体的に購買業務を管理・改善していきたい、データ活用を重視したい場合に適した方法です。
まとめ
購買BPOは、パーチェシングを外部委託することで、業務効率化やコスト削減、そしてコア業務へのリソース集中といったメリットをもたらす経営戦略です。専門企業のベストプラクティスや最新技術を活用できる点も魅力だといえるでしょう。
ただし、BPO導入を検討するうえでも、BPO以外の方法で購買業務の課題を解決したい場合でも、重要となるのは自社の購買プロセスを整備・可視化し、効率化する基盤を整えることです。そのための有効な手段として、先述した「購買管理システム」の導入が挙げられます。
そこでおすすめなのが間接材購買管理システム「SOLOEL」です。「SOLOEL」はクラウド型購買管理プラットフォームとして、煩雑な間接材購買プロセス全体を一元管理・可視化・効率化します。「BPOを検討しているが、まずは自社の購買を整理したい」「システム導入で内部改善を図りたい」といった課題をお持ちの企業様は、ぜひ「SOLOEL」の導入をご検討ください。
▶間接材購買管理システム「SOLOEL」の詳細はこちら