
企業が毎日のように使用する事務用品やMROといった「間接材」の購買は、金額こそ小口でも件数が膨大で管理が行き届きにくい領域です。また、発注が各部署に任されていると重複購入・過剰在庫・不正支出が発生しやすく、J‑SOX対応企業であれば内部統制の不備として監査指摘を受けるリスクも無視できません。
本記事では、間接材購買に内部統制が不可欠な理由を整理したうえで、実務で押さえるべき統制ポイントと、その強化に役立つ購買管理システムの活用についてわかりやすく解説します。
そもそも、内部統制とは
内部統制とは、企業が「業務の有効性・効率化」「財務報告の信頼性確保」「法令順守」「資産保全」という4つの目的を達成するために整える社内の仕組み全般を指します。具体的には、職務分掌や権限規定、承認フロー、ITシステム、監査体制などを組み合わせ、ミスや不正の芽を未然に摘み取りながら組織全体の生産性とガバナンスを高める枠組みです。
上場企業には金融商品取引法にもとづく「内部統制報告制度(J‑SOX)」が課され、経営者は毎期、自社の内部統制が有効に機能しているかを評価し、その結果を有価証券報告書に添付して開示する義務があります。監査法人が外部から検証することで、投資家や取引先に対して財務報告の信頼性を担保する仕組みになっているのです。
こうした背景から、内部統制は単なる社内ルールではなく、企業価値と社会的信頼を支える“インフラ”と言えます。次章では、この内部統制がなぜ間接材購買業務で特に重要になるのかを掘り下げていきます。
間接材購買業務において内部統制が必要な理由
日々の消耗品がメインとなる間接材は取引件数が多く、管理が粗くなりやすいのが特徴です。内部統制を疎かにすると何が起こるのか、リスクを6つの項目で整理していきましょう。
個人や部署単位で発注される
現場判断でバラバラに発注が行われると、「誰が・いつ・何を・いくらで購入したか」が後から追跡できません。結果として、同じ商品を複数部署が重複購入したり、事業活動に必要ではないモノの購入が発生したりします。購買プロセスを標準化し、購買情報を一元管理しなければ、ムダや不正の拡大は免れません。
主管部門が不在
サプライヤ選定や価格交渉を統括する部門がなければ、担当者ごとに異なる基準で発注が行われ、結果として仕入れ価格が高止まりしてしまいます。さらに、キックバックや私的流用といった不正の温床にもなりかねません。こうしたリスクを回避するためにも、全社レベルで購買方針を策定し、適正価格をモニタリングできる体制を敷くことが不可欠です。
企業にとってノンコア業務である
間接材購買は売上に直結しないため後回しにされがちですが、企業の総支出でみると数十パーセントに上るものとなります。管理を怠れば「見えないコスト」が雪だるま式に膨らみ、営業利益を圧迫します。そのため、内部統制を整えて購買データを可視化し、計画的なコスト削減施策を回す仕組みづくりが求められます。
発注量と発注頻度が多い
単価500円のコピー用紙でも、年間数千冊発注すれば数百万円規模になります。このような小口・高頻度トランザクションを帳票やスプレッドシートなどで管理すると、入力ミスや承認漏れが頻発し、チェックコストも跳ね上がります。ワークフローをシステム化し、承認ルートと金額閾値を自動で制御することで、初めて統制が機能するのです。
三点照合(証憑の付け合わせ)を行わない
発注書・納品書・請求書を手作業で突合すると、数量や単価の誤請求、場合によっては架空請求を見落とすリスクがあります。そもそも、事務消耗品等の間接材においては、照合すら行われないケースが多くあります。システムで突合し、差異を確認する仕組みを導入すれば、ケアレスミスだけでなく、意図的な不正も早期に検知でき、支払前に食い止められます。
明細レベルでの実績把握が困難
明細に「文房具 〇円」としか残っていないと、次年度予算の根拠が曖昧になります。また、総勘定元帳では品目レベルのトラッキングは困難です。購入履歴に対して品目別・部署別に使途をタグ付けし、支出データを蓄積すれば「どの部署が何にコストをかけ過ぎか」を一目で判断できます。内部統制で明細を整備することは、コスト削減PDCAの起点にもなるのです。
購買業務における内部統制のポイント
間接材購買をクリーンかつ効率的に運用するには、ルールを作るだけでなく「誰がやっても同じ品質で回る仕組み」に落とし込むことが欠かせません。
以下の5項目は、 J‑SOXの実務対応でも重視される代表的な管理ポイントです。
発注先の限定・選定基準の明確化
まずは「登録済みサプライヤ以外とは取引しない」という前提を置き、品質・価格・納期・取引実績などの評価指標を文書化します。反社チェックやコンプライアンス項目を含めた事前審査フローを設定しておけば、キックバックや過度な値引き要求といった不正取引の芽を早期に排除可能です。加えて定期的にサプライヤを再評価し、基準を満たさない企業を停止・更新することで、取引ポートフォリオの健全性も保てます。
購買規定の整備
金額別の承認権限や見積取得ルール、支払条件などを具体的に網羅した「購買規定」は内部統制の土台です。実務担当者が迷わず手続きを進められるよう、フローチャートやチェックリストでビジュアル化し、社内ポータルに常時掲載し周知することが定着の近道となります。加えて、規定を年1回はレビューし、組織変更や市場環境の変化を反映させることで形骸化を防げます。
属人化の排除
ベンダー情報や商談履歴が部門や担当者のローカルファイルに閉じていると、不正や引継ぎ漏れの温床になります。購買システム上にマスタデータとして登録し、承認履歴や調達条件をいつでも参照できる形でデータベース化すれば、情報のブラックボックス化をなくせます。さらに、過去の見積実績や購入履歴を瞬時に呼び出せるようにすると、経験の浅い担当者でもベテラン並みの判断が可能になります。
担当者の分離(発注・検収・支払)
発注から支払までを同一人物で完結するとチェック機能が働かず、不正リスクが高まります。発注、検収、支払を別の担当者または部門に分離し、システム側でロール権限を設定しておくことで、相互牽制の仕組みを構築することができます。加えて、特定カテゴリーや一定金額以上の取引で多段階承認等を自動的に要求するワークフローを設けることも、不正に対する牽制の強力な手段となります。
購買プロセス・購買情報の可視化
内部統制の最後の要となるのが「見える化」です。購入申請から支払までの流れをシステム上で時系列に記録し、誰が・いつ・何を・いくらで発注したかを追跡できる状態を整備します。
また、部署別・品目別に集計した購買実績を可視化すれば、コストの偏りや未契約取引等を即座に把握でき、統制強化だけでなく来期の予算計画や購買戦略立案にも直接的に役立ちます。
内部統制の強化には間接材購買管理システムの導入がおすすめ
購買規定や業務分掌を整えても、膨大な間接材購買の実務においては抜け漏れが起こりやすいのが実情です。そこで力を発揮するのが、ルールを“仕組み”として強制できる間接材購買管理システムとなります。
以下では、購買購買管理システム導入によって得られる3つの代表的メリットを記載します。
データや購買情報を見える化できる・一元管理できる
数百、数千にのぼるサプライヤからの購買実績を、一つのデータベースに明細レベルで蓄積することができます。また、申請・承認・検収の全履歴が時系列で保存され、誰が何をいくらで購入したかをトラッキングすることができます。ダッシュボードやExcelで出力して部署別・品目別のコスト分析を行えば、重複発注や価格のばらつきを即座に発見することもできます。
業務フローをシンプルにできる
承認ルートや金額閾値をシステム上でパラメータ設定すれば、申請者や承認者は画面の指示どおりに操作するだけです。紙稟議やメール確認が不要となり、処理時間を大幅に短縮できます。また、標準化されたフローは誰が見ても一目瞭然であり、人事データベースとの連携、代理承認や権限移譲等の機能も有することから人事異動や休職時にも業務が滞りません。
ヒューマンエラーや不正の防止に役立つ
購買管理システムでは、発注・検収の担当権限を分離できるため、恣意的な操作や二重支払等の不正をシステム面で排除できます。ログは監査証跡としてそのまま利用でき、J‑SOX対応もスムーズです。
まとめ
間接材購買は取引件数が多く、部門ごとに発注や検収が散在するため、不正やムダが潜みやすい領域です。購買管理システムでワークフローを標準化し、証憑を自動照合すれば、ガバナンスとコスト最適化を同時に実現できます。
間接材購買管理システムの「SOLOEL」は、物品材の購買からサービス材の契約管理までカバーでき、承認フローや会計連携も標準搭載されています。初期導入のハードルが低く、J‑SOX対応の証跡管理までサポートできる点が魅力です。間接材購買の統制強化と業務効率化を目指す企業の方は、「SOLOEL」の導入をぜひ検討ください。
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