間接費削減の重要性に着目!直接費との違いや経費削減に向けた手順を解説

間接費削減の重要性に着目!直接費との違いや経費削減に向けた手順を解説

企業の利益を向上させるためには、売上拡大とコスト削減の両面が重要です。特に、企業活動全体に影響を与える間接費の削減は、直接的な利益の伸長につながり、企業体質の強化に欠かせません。

本記事では、企業の経費における間接費の位置づけを明確にするため、直接費との違いや間接費を削減するメリットを具体的に解説します。さらに、間接費削減に向けた具体的な手順や、実施にあたっての重要なポイントを掘り下げていきます。

間接費?直接費?企業における費用とは

間接費のコスト削減を進める前に企業の費用区分である「間接費」と「直接費」を理解し、管理することが重要です。まずは間接費と直接費の定義や具体的な科目、違いを理解し、正確に認識しておきましょう。

間接費と直接費を分けて管理する理由と目的

企業が原価を間接費と直接費に分けて管理する理由は、製品やサービスのコスト構造を明確に把握するためです。正確にコストを分析することで適切に価格を設定でき、利益率を最大化することにつながります。また、原価を正確に把握しない場合、過剰なコストがかかり結果として赤字を招きかねません。

間接費と直接費を分けて管理することで、各製品やサービスがどれだけのコストを要しているか把握しやすくなり、経営判断の質を高められます。

間接費の概要

間接費とは、製品やサービスに間接的・付随的に発生する費用のことです。例えば工場の電気代や事務所の家賃、従業員の福利厚生費や出張費・交通費、従業員が使用する消耗品費、事務用品費など「事業を運営する上で全体的にかかるコスト」が該当します。これらは、特定の製品やサービスに紐づけることが難しく、企業全体の経費として計上されることが多くなります。

製品ごとの直接的なコストが明確にわかる直接費と異なり、間接費は事業の複数の側面にまたがって発生するため、特定の製品に対してどれほど間接費がかかっているか正確に把握するのが難しい特徴があります。そのため、コスト管理を適切に行うためには、間接費の考え方を理解し、効果的に管理することが必要です。

間接費の種類と具体例

間接費には様々な種類があり、業態や業種によって具体的な項目が多少異なりますが、大きく分けて「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」の3つに分類されます。

  具体的な科目
1.間接材料費 補助材料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費
2.間接労務費 間接作業賃金、間接工賃金、手待賃金、休業賃金、給料、従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、福利費(健康保険料負担金など)
3.間接経費 福利施設負担額、厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、ガス代、水道料、租税公課、旅費交通費、通信費、保管料、たな卸減耗費、雑費

1.間接材料費

間接材料費とは、製品の製造過程では直接使用されないものの、必要不可欠な材料の費用のことです。例えば、工場で使用される塗料や燃料、機械のメンテナンスに使用される機械油などが該当します。これらは製品に直接組み込まれることはありませんが、製造プロセスを支えるために必要です。

2.間接労務費

間接労務費は、製品の製造やサービスの提供には直接関わりませんが、事業運営を支えるために必要な労務費です。例えば、管理部門のスタッフの給与や人事・経理部門の従業員の給与などが該当します。これらの労務費は、製品やサービスの提供には不可欠であるものの、直接的なコストには含まれません。

3.間接経費

間接経費とは、企業の事業運営において発生する、その他の間接的な経費を指します。具体例としては、オフィスの光熱費や通信費、事務用品の購入費などがあります。これらは事業全体を運営するために必要な費用であり、また日常的に発生するため、企業のコスト管理において重要な項目です。

なお、間接費と似たものに「販売費及び一般管理費(販管費)」がありますが、販管費は主に販売促進や会社の全体的な運営に関連する費用を指します。具体的には、広告宣伝費や経営陣の報酬などが該当します。

直接費の概要

直接費は材料費・人件費など「製品やサービスの提供に欠かせないコスト」となります。大きく分けて「直接材料費」「直接労務費」「直接経費」の3つに分類されます。

  具体的な科目
1.直接材料費 主要材料費(原料費)、買入部品費
2.直接労務費 直接賃金(必要に応じて作業種類別に細分)
3.直接経費 外注加工費

1.直接材料費

直接材料費は、製品の製造に使用される材料や部品にかかる費用のことです。例えば建設業の場合、工事現場で使う木材や金具、塗料などが直接材料費に該当します。これらの材料費は、最終的に提供する製品に直接組み込まれるため、コストを明確に把握しやすいといえます。

2.直接労務費

直接労務費とは、製品を製造するために必要な人員に支払う人件費のことです。製造ラインで働く従業員の給与や、特定のサービスを提供するための従業員の報酬などが該当します。直接労務費は、製品やサービスの価格設定に直接影響を与えるため、正確に把握する必要があります。

3.直接経費

直接経費は、製品やサービスを製造・提供する際に発生するその他の経費を指します。例えば、特定のプロジェクトのために使用する機器のレンタル料や、製品製造に必要な特別な工具の費用などが該当します。

間接費の割合と削減効果

前項で「間接費」と「直接費」についてご説明しました。
ここでは会社全体の費用のうち「間接費」と「直接費」の割合がどれくらいなのか、また「間接費」を削減する効果・メリットは何か。についてご説明します。

  間接費 直接費
1科目あたりの金額 少額 高額
発生頻度 不規則 規則的
発生量 大量 限定
関わり方 複数の製品やサービスに発生 特定の製品やサービスに発生
コスト削減のし易さ 取り組みにくい 取り組みやすい
コスト削減の余地 大いに期待できる ほとんど期待できない

間接費と直接費の割合と削減効果の違い

直接費と間接費の割合は諸説ありますが、一般的に8:2若しくは9:1と言われています。直接費は正確に把握・管理しやすいという特徴があり、科目ごとの金額自体が大きいため、コスト削減の効果が出やすく、すでに多くの企業で最適化が進んでいます。

一方で、間接費は正確に把握・管理することが難しいという特徴があり、科目あたりの金額が小さくコスト削減の効果が出にくいと考えられ、まだ本格的なコスト削減に取り組んでいない企業が多い傾向にあります。

間接費を削減するメリット

「コスト削減」と聞くと、把握・管理しやすい直接コストの削減に注力してしまいがちですが、間接費こそ削減すべきです。ここでは、間接費を削減する6つのメリットについてご紹介します。

  1. 利益率の向上につながる
  2. 大幅なコスト削減につながる可能性が高い
  3. 直接費を削減するよりもデメリットが少ない
  4. 価格競争力を高められる
  5. 財務状況が安定する
  6. 市場開拓や技術開発につながる

メリット1:利益率の向上につながる

直接費は製品やサービスに直接関係しているため、直接コストを削減するとマイナスの影響を与えてしまうリスクがあります。例えば、製品のクオリティの劣化や、従業員のモチベーションの低下などが考えられるでしょう。

コスト削減における本来の目的は、利益率をアップさせることです。間接費の見直しにより、売上にマイナスの影響を与えることなく、コストを削減できる可能性があります。

メリット2:大幅なコスト削減につながる可能性が高い

間接費は科目あたりの金額が少ないため「コスト削減できる総額が低い」と考え、間接費の削減に取り組んでいない企業が多いのが現状です。

しかし、間接費(特に間接経費)は不規則かつ大量に発生するコストであり、全体の費用の10~20%に相当するといわれています。間接費を削減することで、大幅なコスト削減につながる可能性が高いのです。

メリット3:直接費を削減するよりもデメリットが少ない

間接費を削減することは、直接費を削減する場合に比べてデメリットが少ないといえます。直接費の削減は、前述のとおり製品やサービスの品質低下につながりやすく、結果として顧客満足度やブランド価値に悪影響を及ぼす恐れがあります。

一方で間接費の削減は、業務の効率化や無駄の排除を目的とするため、品質に直接的な影響を与えることは少ないでしょう。例えば事務用品にかかる費用や通信費の見直しは、製品に直接影響を与えることなくコストを削減できます。長期的に見ても持続可能な改善策として非常に効果的です。

メリット4:価格競争力を高められる

間接費を削減することで、企業の価格競争力を高められます。製品やサービスの価格設定において、コスト削減が実現すれば、競合他社に対して有利な価格を提供できるようになります。
特に価格競争の激しい業界では、コスト削減によって実現した利益率の向上を、価格引き下げや付加価値サービスの提供に転換するとより効果的です。

これにより、新規顧客の獲得や既存顧客の満足度向上が期待でき、さらに市場シェアの拡大にもつながります。間接費の見直しは、こうした価格競争力の向上に大きく貢献するため、ビジネス戦略の一環としても効果的です。

メリット5:財務状況が安定する

間接費を削減することで、企業の財務状況が安定しやすくなります。無駄な支出を抑えることでキャッシュフローが改善し、企業の資金繰りが楽になります。特に中小企業において、間接費の削減によるコスト削減効果は即座に経営資源の増加につながり、経営の安定化に寄与するでしょう。

さらに、財務が健全な状態であれば外部の信用度が高まり、融資や投資を受けやすくなります。これにより、企業は成長に必要な資金を確保しやすくなり、新たなビジネスチャンスに対しても柔軟に対応できる体制が整います。間接費削減は、経営のリスク管理にも貢献します。

メリット6:市場開拓や技術開発につながる

間接費の削減で生まれた資金は、新たな市場開拓や技術開発に投資することが可能です。間接費削減によって浮いた資金を活用することで、企業は新しい事業分野への進出や既存事業の強化、さらには研究開発や技術革新に充てられます。

特に、長期的な成長を目指す企業にとっては、このような投資が未来の競争力強化に不可欠です。例えば新しい製品の開発や、既存製品の改良、デジタル化への投資などが、企業の競争優位性を強化する手段となり得ます。間接費削減は、企業の成長を支える基盤づくりに寄与する重要な施策です。

間接費を削減するには

間接費を削減するには以下のステップの通り進めていく必要があります。

現状の間接費の支出状況を把握し可視化する

間接費削減の第一歩は、「自社のどこが」「いつ」「何に」「どれだけ」の費用が発生しているのか、実態を「見える化」することです。部門単位、勘定科目単位、物品材・サービス材単位、カテゴリ単位で、間接費が年間でどれくらい発生しているのか、一覧化します。

ここでは、間接費のうちコスト削減対象となる物品材・サービス材のカテゴリを列挙します。

科目例 カテゴリ 品目(具体例)
物品材 間接材料費 機械設備・研究資材・試薬 補助材料(燃料、尿素など)、工場消耗品・消耗工具器具備品(工場設備品、機械の保守部品、金型など)
間接経費 オフィス用品 コピー用紙、文房具、ファイル、事務用品、トナーカートリッジ
生活用品 飲料、食品、ティッシュペーパー、洗剤、ゴミ袋
IT・OA機器 パソコン本体、モニター、プリンター、周辺機器、ソフトウェア、ライセンス
作業用品・工具 軍手、ヘルメット、安全靴、各種工具、計測器、テープ類
梱包・物流用品 段ボール箱、緩衝材、梱包用テープ、パレット、運送サービス
サービス材 販促用品 名刺、封筒、パンフレット、カタログ印刷、ノベルティグッズ
設備・施設関連 修繕・メンテナンスサービス、ファシリティマネジメント(清掃サービス、警備費用等)
リース・レンタル 複合機、カーリース、レンタルサーバー等
旅費・交通費 出張旅費(渡航費等)
間接労務費 その他役務 人材派遣料、コンサルティング費用、研修費用

間接費削減の具体的かつ現実的な目標を決める

現状の間接費の実態が把握できたら、次にコスト削減に取り組むべき品目を選定し、達成可能なコスト削減目標を設定します。また、目標を定める際、指標(KPI)を設定し、社内で共有することが重要です。目標とKPIを明確にすることで、取り組みの進捗状況が客観的に評価でき、モチベーションの維持にもつながります。

取組み品目ごとのコストダウン手法を検討する

具体的な目標と取り組むべき品目、実施スケジュールが決まったら、一覧化したリストをベースに各品目の具体的な購入内容(仕様、単価、数量、納期、サプライヤ、契約期間や条件など)の詳細なデータを収集・整理したうえで、品目ごとにコストダウン手法を検討・実行します。

1.間接材料費を削減する方法

間接材料費とは、製品を製造する上で原材料ではない、補助材料費や工場消耗品費などが該当します。間接材料費を削減するポイントは「必要な分だけを安く仕入れ」て「不要な在庫を抱えない」ことです。具体的には一括で安く仕入れをする、単価交渉をする、在庫管理の見直しをする、などの方法があります。

2.間接労務費を削減する方法

間接労務費とは、製品やサービスに直接関係がない人件費が該当します。間接労務費を削減する方法としては「不要な業務を削減する」「ITを活用して業務を効率化する」「アウトソーシングを活用する」などが効果的です。

例えば「SOLOEL」のような間接材購買管理システムを導入すれば、紙やExcelで行っていた一連の業務をシステム上で一元管理でき、効率化と担当者の作業負担軽減が期待できます。

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また、総務や経理関連の定型業務などを専門業者へアウトソーシングすることも、人件費や採用・教育コスト、残業代などを抑制するうえで有効です。

3.間接経費を削減する方法

間接経費とは、製品やサービスに直接関係がない費用、事務用品の購入費やオフィスの賃貸料・光熱費・出張にかかる旅費や交通費などが該当します。間接経費は事業運営する上で必ず発生する「共通の費用」となるため、業界・業種を問わず、管理・適正化しやすいという特徴があります。

複数のサプライヤに相見積もりを依頼したり、コンペティションを実施したりして、最も有利な条件を引き出しましょう。購入量が少ない品目については、サプライヤを集約したり、まとめ買いしたりすることで、ボリュームディスカウントによる単価引き下げを狙います。

例えば「オフィス用品の購入コストを削減するために、複数あるサプライヤを1,2社に集約してボリュームディスカウントを狙う」「発注金額が大きいコピー用紙は相見積もりでベストプライスを提示したサプライヤと契約する」といった手法です。

併せて、購入している物品やサービスの仕様そのものを見直すことも重要です。例えば、社員用PC調達の際に必要以上に高性能な規格としていないか、利用していない保守契約や過剰なサブスクリプションサービスを契約し続けていないかなどをチェックし、オーバースペックな仕様を緩和することでコスト削減につながります。

コスト削減効果をモニタリングする

取組品目のコストダウンを実施したあとは、その効果を定期的にモニタリングし、改善の余地があるか確認します。モニタリングでは、削減した費用が目標に達しているか、さらに削減可能な部分がないか分析します。

経費削減は一度実施して終わりではなく、持続的な改善が必要です。定期的にレビューを行い、必要に応じて新たな目標を設定するか、削減方法を再評価します。実施後のデータに基づくフィードバックを活用することで、長期的なコストの管理が可能です。

また取組品目のサプライヤ情報、お取引情報を予めカタログに登録することで、従業員がカタログを参照して発注を行うことも可能です。例えば「SOLOEL」のような間接材購買管理システムの一機能である「ローカルカタログ購買(内部方カタログ)」を活用すれば、継続的なコスト削減効果を得られるだけでなく、業務効率化、コンプライアンス強化といった様々なメリットが期待できます。

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購買システムを利用して間接費削減に成功した事例

ここでは、購買システムを利用して間接費削減に成功した事例を紹介します。

事例1:購買プロセスの統一によるコスト削減とガバナンス強化

ある大手金融グループでは、各社が個別にECサイトを利用していたため、ボリュームディスカウントの恩恵を享受できず、購買コストが増加していました。そこで「SOLOEL」を導入し、外部カタログの統合やワークフローの標準化を図ることで、購買プロセスの一元化とガバナンスの強化を実現。価格比較が容易になり、定量的なコスト削減効果を得ることができました。

事例2:データ連携による業務効率化とコンプライアンス強化

ある不動産関連企業では、従来の購買業務がメールやFAXで行われており、検収方法も統一されていませんでした。そこで「業務効率化」「実績の見える化によるコスト削減」「コンプライアンス強化」の実現に向けて「SOLOEL」を導入。人事情報や会計システムとのデータ連携が可能となり、組織変更時のID管理業務が不要になりました。加えて、検収方法も統一化されたことで、業務効率化だけでなくコンプライアンスの強化も同時に実現しています。

まとめ

間接費の削減は、企業の収益改善と持続的な成長に不可欠な取り組みです。まずは現状の間接費を正確に把握し、具体的な目標を設定したうえで、本記事でご紹介した手順に沿って着実に実行していくことが重要です。

ただ、間接費は多岐にわたる費目や部署に分散しているため、「何から手をつければ良いかわからない」「効果的な打ち手が見つからない」と感じている企業も多いのではないでしょうか。

間接費を可視化し、データに基づいた的確なコスト削減策の実行や購買プロセスの可視化による業務効率化を支援するのが、間接材購買管理システム「SOLOEL」です。「SOLOEL」は煩雑になりがちな間接材の購買データを一元管理し、無駄な支出の発見やより有利な条件での調達をサポートします。

詳しい情報は以下のページでご紹介しているので、この機会にぜひご覧ください。

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ソロエルメディア編集部

「ソロエル」では間接材購買プロセスに関する考え方やノウハウ、成功のポイントを紹介していきます。

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