
スムーズに物品やサービスを調達し、品質とコストを両立させながら継続的に事業を運営していくには、購買管理の仕組みづくりが欠かせません。本記事では「購買管理の5原則」をキーワードに、なぜ企業にとって購買管理が重要なのか、またどのように運用すべきかをわかりやすく解説していきます。
目次
「購買管理の5原則」とは
購買管理の5原則とは、主に製造業で用いられる基本的な評価指標である「QCD」(品質・コスト・納期)に、「サプライヤの選定」と「購買数量」の概念を加えたものです。製造業を中心に多くの企業がこの考え方を導入し、安定的な調達とコスト最適化、品質保証などを同時に実現するためのフレームワークとして活用しています。
ここでは、それぞれの要素が具体的にどのように機能し、なぜ重要なのかを解説していきます。
品質妥当性の評価
調達する材の品質は、自社のものづくりやサービスの提供に直接的または間接的に影響します。例えば、製品の原材料や要素部品については、高い品質基準を満たす必要があります。一方で、事務用品のような間接材は、必要十分な品質を満たしていれば過度に高品質を求める必要はありません。
ただし、購買対象が消耗品やオフィス設備、あるいは外部委託サービスであっても、事業運営に必要な材であるため、一定の品質基準を満たすことが求められます。そこで重要なのが、主要なアイテムに関しては、購買仕様書などの形で要求事項を明確に定義し、サンプルや検査レポート、クレーム件数や故障率など、客観的なデータや基準に基づいて品質を評価する仕組みを整えることです。
価格妥当性の評価
適切な価格とは、企業が求める品質や納期条件を満たしつつ、サプライヤとの持続的な関係を築くための1つの水準です。複数の事業者から相見積もりを取り、コスト分析や市場動向の把握を行い、妥当な価格交渉を実施することが大切です。
また、取引条件や支払方法を工夫することでサプライヤにメリットを提供し、価格面での合意を得やすくする方法も考えられます。バランスの取れた価格設定を行うことで、企業のコスト競争力を維持しながら、サプライヤとの信頼関係を長期的に継続していくことが可能です。
納期の設定・管理
納期は、短くするほど良いというわけではありません。過度にリードタイムを短縮しようとすれば、仕入れ価格が上昇したり、品質管理が行き届かなくなるリスクもあります。そこで必要なのが、適切なリードタイムを設定しつつ、万が一のトラブルに備えた緊急対応策を用意しておくことです。
例えば、重要性や回転率などに応じて、バッファ在庫を確保しておくこと、サプライヤとの契約で予備枠を確保すること、突発的な受注増に対応できるよう複数の仕入れ先を持つことなどが考えられます。納期設定を最適化することで、生産計画やサービス提供の安定化を図りながら、余分なコストやトラブルを未然に防ぐことが可能です。
発注量の設定・管理
購買数量の設定を誤ると、保管コストや廃棄リスクが増大し、企業全体の利益を圧迫しかねません。逆に不足すると、生産ラインを止める原因やオフィス運営に支障をきたし、顧客対応や業務進行に遅延が発生するおそれがあります。そのため、需要予測や在庫の定期モニタリングを行い、必要最小限の発注で最大限のパフォーマンスを引き出す工夫が必要です。
購買管理においては、必要量と発注タイミングのバランスを取りながら、最適な在庫量を確保することが求められます。一般的な手法としては、需要予測や経済的発注量計算(EOQ)に基づく「定量発注方式」や予め決められたタイミングや安全在庫に基づく「定期発注方式」の活用が挙げられます。
サプライヤの選定・評価
かつての調達購買部門の役割は、いかに安価に調達するかに重きが置かれておりました。しかし、昨今においては、人口減少・経済低迷といったトレンドや、下請取引の適正化といった規制も加わり、より多面的な視点を踏まえたサプライヤの選定・評価が必要となっております。
適切なサプライヤの選定にあたっては、品質・価格・納期・供給力・環境配慮・人権配慮・DX・与信など、事業性や製品性を入札やコンペ等で総合的に評価する必要があります。また、自然災害や政情不安、トラブルなどによって調達が滞るリスクを想定し、分散調達化や代替仕入先の確保も重要な検討ポイントとなります。
「購買管理の5原則」を行使するために必要なこと
購買管理の5原則を実践するには、規定や業務フローの整備、データの管理体制など、企業内での調達購買を運営するための基盤づくりが欠かせません。ここでは、5原則を効果的に機能させるために必要なポイントを解説します。
購買管理規定の作成
「購買管理規定」とは、購買に関する組織・手続き・契約・監督・記録等のルールを明文化したものです。購買管理規定を定めている事業者は、調達購買部門が存在する製造業や公共性を有する団体等が中心となります。サプライヤ選定、発注、検収、品質確保、契約管理など、それぞれの手順や責任範囲等を明確に記載することで、業務の標準化と実施水準の担保を実現します。
購買管理規定に限らず、行動規範となるルールや仕組みが不在であったり軽視されている場合、業務効率や生産性の低下、従業員のモラール低下、ガバナンスの低下などにつながります。間接材の調達購買を行うあらゆる業種において、購買管理規定を定めることは有効です。
購買業務フローの最適化
見積、承認、発注、検収、支払といった購買業務における各プロセスを業務フロー図として明確化・可視化することで、全体の整流化と各工程の作業品質向上に寄与します。例えば、適切な納期設定や価格決定が求められる場面では、上長承認のステップや検査項目等をフロー上に落とし込むことでミスを極小化することが可能となります。
また、フローの検討と同時に、社内部門間やサプライヤ間との情報連携方法の検討も重要です。例えば、購買管理システムやサプライヤ管理システムを導入すれば、リアルタイムでの進捗管理やスムーズなコミュニケーションが可能となり、業務フローの実行が確実なものとなります。
購買関連情報の一元管理
調達購買活動によって生み出される、サプライヤ、品目、購入明細過、在庫などの、各種マスタ情報や取引情報は、組織構造上の問題や対応領域の広さから、情報が分断・散在しがちです。分権型の組織であったり、重要度が低いBCランクのアイテム群であっても、網羅的かつ一元的に購買に係る全量データを把握できる仕組みの構築が理想です。
購買管理情報の一元管理を実現するにあたっては、システムの導入が不可欠となります。調達購買系のシステムは、大きく「製造業向けの直接材調達業務を網羅した統合システム」と「業種を問わない間接材購買の集約化を実現するシステム」に分かれます。直接材・間接材のそれぞれにおいて、全社統一のシステムを利用することで、購買関連情報を一つのシステム基盤に集約することが可能となります。
購買業務における役割・権限の分担
購買管理規定や業務フローを整備する際の重要な観点として、職務分掌による担当部門や業務範囲の明確化と相互牽制体制の構築が挙げられます。例えば、発注から受入までを同一人物が行っている場合、架空発注や横領などの不正行為が起こりやすくなります。発注部門と検収管理部門を別々に分けることで、不正や確認漏れといったリスクの軽減が可能となります。
また、健全な購買業務運用を維持するためには、構造的な牽制体制の構築と同時に、サプライヤとの癒着や属人化・ブラックボックス化を防ぐための定期的なジョブローテーションも必要となります。定期的に担当者を交代することで、新しい視点やチェックが入り、サプライヤ選定や業務改善が適切に行われやすくなる効果も見込めます。
「購買管理の5原則」を徹底するには購買管理システムが有効
購買業務は社内外の多くの人やプロセスをまたぐため、ルールを整備していても、メールやExcel、紙媒体等のアナログ運用ではムリやムダが生じます。購買管理の5原則に則った業務遂行を実現するためには、購買管理システムの導入が必須です。
購買管理システムができること
サプライヤ選定、品質・コスト・数量・納期管理といった購買に係るあらゆる要素を、企業内でしっかり管理統制するには、膨大なデータと手続きを正確に処理する仕組みが必要です。購買管理システムには、調達購買活動を最適化するうえで必要となる様々な機能が備わっています。以下に代表的な例を示します。
- カタログ購買:ローカルカタログまたは外部カタログの商品を選択し、発注する
- 見積購買:見積依頼や価格交渉・選定のプロセスをシステム上で管理する
- 承認ワークフロー:発注の申請から承認までの流れを電子化し、証憑管理を行う
- 検収管理:受入検収をシステム上の発注実績と照らし合わせて行い、検収実績として確定する
- 予算管理:部門別の予算進捗を管理し、購買統制や支出管理を行う
- 会計連携:基幹システムへ検収実績データを自動的に連携し仕訳・支払い処理を行う
購買管理システムを導入すると、購買管理の5原則の観点から、以下のようなメリットが期待できます。
購買管理の5原則 | 購買管理システム導入のメリット |
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品質妥当性の評価 | カタログや見積管理により、購買担当者が集中的に比較検討した材の調達が可能となる。 |
価格妥当性の評価 | 支出分析やソーシングに必要な全社の購買実績データを一括で参照またはダウンロードできる。 |
納期の設定・管理 | サプライヤ別の標準リードタイムを設定し、発注明細単位で購買部門、要求元それぞれが納期管理を行うことができる。 |
発注量の設定・管理 | 標準発注ロットをカタログに登録できる。在庫管理システムと連携すれば実在庫をリアルタイムで把握できる。 |
サプライヤの選定・評価 | ソーシングの結果をカタログに掲載し購買集約が可能となる。見積実績データに基づき推奨サプライヤの選定を行う。 |
購買管理システムを導入した大手自動車メーカー様の導入事例
ある大手自動車メーカー様では、資材・設備・要具等の間接材購買領域において、外部カタログ接続機能のない旧来型の独自システムを使用しており、購買部門や要求元部門のそれぞれにおいてカタログメンテナンス等の作業に膨大な工数を投じておりました。さらに、老朽化によりシステム障害が頻発し、安定的に稼働できない状況も大きな課題となっておりました。
そこでコンペの結果、間接材購買管理システム「SOLOEL」を導入し、間接材購買システムの刷新に成功しました。採用の一番の決め手は、国内すべての外部カタログを有するサプライヤとの接続実績とSOLOEL独自の横断検索機能です。購買本部主管でソーシングされたカタログ群から一括で比較検討できるようになったことから、誰でも最適な購買を行うことが可能となりました。また、SLAにて99.8%の稼働率を掲げており、副資材、器具備品、機械設備といった工場の運営に欠かせない材の調達を行う本システムの安定稼働に貢献することができました。
まとめ
購買管理の5原則を踏まえつつ、社内ルールやデータ管理、フローの可視化などを一体的に整備することで、コストの最適化や品質向上、そして納期管理など複数の課題を同時に解決しやすくなります。購買管理システムを活用すれば、承認プロセスの効率化やデータの一元管理も一気に進み、よりスピーディーかつ正確な購買判断を下せるようになるでしょう。
「SOLOEL」は、企業規模や業種・業態を問わず、44企業法人グループ600社以上のお客様にご利用頂いている間接材購買管理システムです。購買管理の5原則を踏まえた、購買プロセスの実現をサポートいたします。「物品とサービスを別々に管理していて運用が煩雑」「契約管理も含めて購買プロセス全体を効率化し、統制を強化したい」など購買業務に関する課題をお持ちであれば、ぜひ「SOLOEL」の導入をご検討ください。